halucino!
どうもこんにちは、幻覚マドロイドです。
ハルキゲニアについての話。
皆さんは「ハルキゲニア」という生物をご存じですか? ハルキゲニアはカンブリア紀の生物の一種でして、残念ながら現在は化石でしかお目に掛れません。しかし、見た目から存在の経緯まで、様々な魅力に溢れている素敵な生物です。僕も古生物の中では、かなり好きな生物です。なんならフェンストーノ公国の国獣にしてもいいと思ってます。というわけで、今日はそんなハルキゲニアについてご紹介します。
まず、カンブリア紀についての説明を軽くしたいと思います。カンブリア紀というのは、地質時代の1つです。地質時代とは、46億年前の地球の誕生から現在までの相対的な時間区分のことで、カンブリア紀は約5億4100年前から4億8500年前までの、約5600年間を指します。なお、より大きい区分としては、カンブリア紀は古生代の一番最初に当たります。
カンブリア紀の生物の化石は、カナダのロッキー山脈に位置する「バージェス頁岩(けつがん)」という地層で大量に出土しました。そこで発見された動物は「バージェス動物群」と呼ばれています。ちなみにバージェス動物群の動物は多くが硬い組織を持ち、攻撃や防御の器官が発達していることが特徴です。そのため、生物の間に捕食-被捕食の関係があったと考えられており、これは目と視覚の急激な発達によるとする説もあります。ハルキゲニアも、このバージェス動物群に属します。
ハルキゲニアを始めとするカンブリア紀の生物は、多くが海底で生活していました。これはハルキゲニアの一種の、ハルキゲニア・スパルサです。背景は適当に描いてます。
あ、間違えました。正しくはこちらです。
ハルキゲニアの一番の特徴は、この不思議な見た目だと思います。上下に左右が同じようなトゲトゲがたくさんついていますね。先ほどは僕も間違えた画像を挙げてしまいましたが、かつては上下だけでなく左右(頭の向き)も誤解釈されていました。なお、色はよく分かっていないので勝手に好きな色を塗っています。
カンブリア紀には現在の動物の門のほぼ全てを含む多様な生物が現れましたが、後の時代に繋がらなかった生物もいました。そのため、現在の分類の枠組みに当てはまらない動物は「奇妙奇天烈動物」とも呼ばれていたようです。すごいネーミングですが、他に言い表しようがないという点ではある意味的確かもしれません。確かに、ぱっと見では現在の生物に似たものは居ない気がしますよね。
ハルキゲニアは、当初は生物の化石かどうかすら分からないということで未詳化石とされていましたが、現在では生物の化石として「葉足動物」に分類されています。ちなみにハルキゲニア科のハルキゲニア属は3種います。スパルサの仲間がもう2種いるということですね。葉足動物は現在は全て絶滅していますが、節足動物やクマムシ、カギムシなどと同じカテゴリーに属するため、それらの起源に関わりがあるとされています。
このように不思議な見た目のハルキゲニアですが、体長は1から5センチほどで、意外と小さい動物です。とはいえ、この時代の生物は大きくても数十センチなので、特別に小さいというほどでもありません。ですが、個人的にはもう3メートルくらいあってもいいんだけどなと思っています。いや、20センチくらいのがうじゃうじゃ居てもいいな。全体像は、ちょっとデフォルメしてますが、だいたいこんな感じです。
ハルキゲニアの背中にはトゲがあり、これで捕食者から身を守っていたようです。脚は前の2、3対が触手状になっています。この辺の本数は種によるようです。触手状の足は、カイメンや腐った肉などの食物を口元まで運ぶのに使われたと考えられています。かわいいですね。巻き付けて持ってたんですかね? 見てみたいものですね。指とかにキュっと巻き付けられたい。
脚の先端には鉤爪があり、移動に役立ったようです。脚の鉤爪に触手もあるとか、最高の造形してますよね。ハッピーセットか? 創造主のフェティシズムを感じざるを得ません。頭部の先端には口があり、歯も生えています。これでガブっとやられたいですね。また、目は単眼で一対以上あります。単眼とは簡単な構造の目で、明暗や光の方向を感じることができるものです。現在見られる生物の中では、昆虫やクモ類、カブトガニなどが持っています。
このように、ハルキゲニアは遠い五億年前の海の底で暮らしていました。目があるとはいっても私たちの持つものとは違う目で、現在とは全く違う世界を、全く違う風に見ていたのでしょう。ハルキゲニアという属名は、ラテン語で「夢想が生むもの」「幻覚によるもの」というような意味です。ラテン語には詳しくないのですが、夢想とか幻覚という単語に「~生む」みたいな意味の gen をくっつけて、ia で名詞化したみたいな感じらしいです。
見えないものが見えてしまう幻覚も、存在しないものを想像する夢想も、目で受容して脳で認識するという過程の一種の副産物と言えるかもしれません。しかし、化石として生きた証を現在まで遺したハルキゲニアは、確かに私たちにその姿を示しています。そして、見えているという状態すら突き詰めて考えれば不安定な我々人間によって、様々な事実を探られ、認知のレイヤーを重ねられてきました。その結果、私たちの見ている世界、その現実という本物の幻影の中で、夢から覚めないような姿のハルキゲニアは現在もこうして認められています。ハルキゲニアは、いわば幻覚の中の本物の幻想といったところでしょうか。
存在しないような姿の、かつて存在した素敵な生き物、ハルキゲニア。その生物としての興味深さと不思議な魅力を、皆さんに少しでも感じていただけたのなら幸いです。
ということで、ハルキゲニアについての話でした。思ったんですけど、こいつってちょっとザイクロトランに似てますよね。だから好きなのかもしれません。ああいう系統の見た目が好みなんでしょうね。思えば、ハオリムシとかカイメンとかもやたらと好きです。何萌えなんでしょうか。管? イモムシとかセンチュウみたいなのも好きですね。管萌えか。新ジャンル過ぎる。まあ言ってみれば人間だって簡略化すれば竹輪みたいなものですが、それが本当に簡単な構造のものが特に好きなのかもしれません。
あ、ここの画像は自作なので、出典か作者を書いてもらえれば使っていただいて大丈夫です。ぜひ皆さんもハルキゲニアを愛でましょう。ちなみに線画もあるので、好きな色で塗って使いたい方は、ご連絡くだされば差し上げます。素敵なハルキゲニアライフを!
それではまた。
〈参考文献〉
阿形清和・他(2020)『スクエア最新図説生物neo』改訂8版, 吉里勝利監修, 第一出版社.
岐阜大学教育学部地学教室『バージェス動物群』(2024年4月13日閲覧).
嶋田正和・他(2020)『改訂版生物』数研出版.
The New York Times『The Cambrian Explosion’s Strange-Looking Poster Child』(2024年4月13日閲覧)
Wikipedia『ハルキゲニア』(2024年4月13日閲覧)
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